万年こたつ

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【小説感想】殺戮は進化の課程で得たものなのか?『虐殺器官/伊藤計劃』

タイトルのに惹かれて購入。

 

虐殺器官…なんてインパクトのあるタイトルなんだ。

 

 

本の情報・あらすじ

虐殺器官/伊藤計劃(早川書房)

9.11以降の“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう……彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは? ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化!

 

 

 

 面白かったところ

殺戮は進化の課程で得たものなのか?

来年アニメ映画化すると聞いて。ゼロ年代を代表するSF作品だそうです。なんと作者は若くして亡くなっており長編作品はこれを含めて3作品しかないとか…。

 

物語の世界は近未来。9.11のテロから数年後、テロ対策のため世界は完全な情報管理社会となっている。チップを体に埋め込んだり、指紋・網膜認証・顔認証・声紋などを徹底したり(ピザのデリバリーの受け取りに指紋認証が必要だったり、銃にも指紋認証があり誰がどこで発砲したかが記録されたり)と個人の生活はすべて筒抜け状態。さらにこれまではタブーとされていたテロリストの主要人物の暗殺を国が担うようになった世界が舞台となっている。

 

語り部でもある主人公:クラヴィスは国の暗殺機関の一員。これまでは上からの命令で暗殺を行ってきたが、唯一自身の母だけは自分の選択により殺してしまい、そのことが心に引っかかるまま世界各地の虐殺に関わってるとみられるジョン・ポールを追いかける。

 

内戦や虐殺などの残酷な描写と、第一人称が「ぼく」の主人公のどこか客観的な語り口がギャップとなって物語に入り込みにくい。文章の内容も小難しいのも読みにくさを手伝ってた。話の構成は「虐殺を仕掛ける人物の判明」→「それを行う方法」→「行う理由」と順序良く明かされていくのだが途中での問答が難解だった。

 

それでも「どれだけ情報検索が発達しようが人は見たいものしか見ない」や、「殺戮は個の生命でみれば短絡的なことだが種の保存という点からは合理的だ」とか考えもしないことが書かれていて面白い。幸福はすべての人間に平等ではなく、多数を生かすために小数を殺すってのはまさに切嗣やエミヤが体現した正義の味方だなあ。

 

虐殺器官もそれを呼び起こす方法も本当にありそうで怖いが、それよりも自分がいつどこの建物に入り、何を買ったかも全て記録される社会の方が将来ありえそうで気持ち悪かった。それも犯罪やテロを防ぐためとなったら仕方ないのだろうか。

 

しかしこれがどうやってアニメ映画化するのか。ちょっと楽しみ。

 

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