万年こたつ

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【薬】骨粗鬆症治療薬『プラリア皮下注』の特徴、ビスホスホネート製剤との違い

ちょっと患者さんに聞かれたときにしどろもどろになっちゃったので改めて整理を。

 

骨粗鬆症とは?

骨は一度で来たらそのままではなくて、骨を作る「骨芽細胞」と骨を破壊する「破骨細胞」がバランスをとりながら働いてます。これにより骨の新陳代謝をしながら骨密度を維持してます。


骨粗鬆症とはこのバランスが崩れて骨密度が低くなることです。骨密度が低くなると軽くこけただけでも骨折しやすくなります。お年寄りの場合、骨折した場所が悪いと寝たきりの原因になるので割と大変な病気です。

 

また、女性ホルモンの一つであるエストロゲンは骨の新陳代謝において骨からカルシウムが溶け出すのを緩やかにする働きがあります。女性が高齢になり閉経してしまうとエストロゲンの量が減るため、骨が減るスピードがあがり骨密度が低くなります。このため骨粗鬆症は女性に多い病気だと言われています。

 

 

骨粗鬆症の治療薬の種類

骨粗鬆症の治療薬は大きくわけて以下の4つになります。

 

①骨の吸収量を増やす薬

②骨芽細胞の働きを増やす薬

③破骨細胞の働きを減らす薬

④女性ホルモンを補う薬

 

①骨を作るうえでカルシウムは欠かせません。カルシウム製剤だけでなく、カルシウムの吸収をよくするビタミンD製剤などもあります。

 

②骨を作る骨芽細胞の働きを高めることで骨密度を上げます。ビタミンK製剤や副甲状腺ホルモン(フォルテオとか)がこれに当たります。

 

③②とは逆に骨を壊す破骨細胞を弱める薬です。今回気になったビスホスホネート製剤やプラリアはここに属します

 

④女性ホルモンが足りないのなら補えばいいじゃない。エビスタとかそのへんです。

 

薬理作用の違い

そんなわけで本題の「ビスホスホネート製剤とプラリアの違い」について。両者とも「破骨細胞の働きを弱める」けどその薬理作用はそれぞれ以下のようになる

 

ビスホスホネート製剤

骨基質内でビスホスホネートがハイドロキシアパタイトと結合⇒破骨細胞が骨を壊すときに一緒に取り込まれる⇒破骨細胞がアポトーシスを起こす⇒骨吸収が減る

 

プラリア

骨芽細胞が放出するRANKL(破骨細胞分化促進遺伝子)に結合⇒破骨細胞が分化しない⇒骨吸収が減る

 

投与方法の違い

患者が薬を継続できるかの一番の要因である服用方法は以下のようになる

 

ビスホスホネート製剤

起床時に多めの水で飲む。飲んだ後は30分間は横にならず、水以外も飲まないようにする

 

プラリア

6か月に1回皮下注射をする

 

ビスホスホネート製剤の一番の悩みどころはこの特殊な服用方法だと思う。慣れてしまえば問題ないが、薬の吸収を良くし副作用の発現を防ぐためとはいえめんどくさい。
薬を作る側も少しでも楽になるようにと毎日飲むもの、1週間に1回でいいもの、4週間で1回でいいもの、と患者さんの負担を軽減できるようにしている

 

それに対してプラリアは半年1回。しかも注射するだけである。注射嫌いな人は無理かもしれんが、朝起きてすぐとかそんな制約もない。めっちゃ楽。

 

薬価の違い

これはビスホスホネート製剤はいろんな種類があるので一概には言えないが、例としてうちでよく出ている「ボナロン錠35mg」と比べてみる(2015年時点)

 

ボナロン錠35mg…1錠 645.5円
半年使う(182日÷7=26週)と 645.5×26=16829(円)

 

プラリア皮下注…1本 29296円

 

生物学的製剤なだけあってプラリア高いですね。MRの説明のとき1日当たりにするとそこまで違いはないとか言うてたけど高いやん。
あくまでボナロン錠35mgとの比較なので他のはわからんがボナロンには既に後発医薬品もでてるので、人によっては切り替えると一気に負担が増えるかも。プラリアだと一括で払わないといけないのでなおさらそう感じる人も多いと思う。

 

薬の有効性

大事な大事な「どれくらい効くのか」ということについて。「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」の2015年改訂版を参考にしました。

 

 

 

骨粗鬆症治療薬の評価ポイントは ①骨密度 ②椎体骨折 ③非椎体骨折 ④大腿骨近位部骨折 の4つの指標に分かれてます。
各薬剤についてそれぞれの項目でグレードがAからCで評価されてます(もちろんAが評価が高い)

 

ビスホスホネート製剤に関しては成分によって評価が違います。
薬価で例に挙げたボナロンだとオールAですが、他のだと③、④がCのものもあります。
ビスホスホネート全体でみると骨密度や椎体骨折に対してはよく効くが、非椎体骨折、大腿骨近位部骨折に対しては効果はまちまちなので、治療の目的と一致しているかが大事になりそうです。

 

それに対してプラリア皮下注はオールAです。さすが生物学的製剤

 

 

副作用

お金に目をつぶれば投薬の気楽さ薬効の高さともにプラリアが優勢なんですが、薬を考えるうえで切っても切り離せないのが副作用。

 

細かい副作用は置いといて、両者共通の重大な副作用は「低カルシウム血症」と「顎骨壊死」の二つです

 

低カルシウム血症

体内のカルシウム濃度は食べ物で外から取り入れるだけではなく破骨細胞が溶かした骨から取り入れたりもするので、破骨細胞の働きが落ちるとその分血中のカルシウム濃度が落ちる可能性があるわけ。そうならないためにカルシウム製剤やビタミンD製剤を併用することも。痙攣が起きたりもするので要注意

カルシウム濃度の異常: 水分と電解質代謝: メルクマニュアル18版 日本語版

 

顎骨壊死

これが一番怖い。初期症状や対応については厚労省の資料で

初期症状として、局所的には、歯肉腫脹など歯周組織の変化、原因が 不明瞭な歯肉の感染、治癒傾向が認められない口腔粘膜潰瘍、膿瘍また は瘻孔形成、義歯性潰瘍、周囲軟組織の炎症を伴った骨露出、歯の動揺、 歯肉の修復機能低下、顎骨の知覚異常、全身的には倦怠感、発熱などが ある 1、2)。 http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1l03.pdf(参照)

と書かれている。上記PDFにある写真がわりとグロい。
で、顎骨壊死はこれら薬を服用中に「抜歯、外傷、義歯不適合による歯槽粘膜の外傷性潰瘍などにより、粘膜欠損、骨露出が生じた場合に発現する傾向がある」(同じとこに記載在り)とあるので、歯の治療中には服用しない方がいいし、服用中は口の中を清潔に保つ必要があります。

 

これが個人的にプラリアの怖いところなんですが、例えばビスホスホネート製剤を服用中に歯の治療をする、もしくは顎骨壊死の初期症状が見られたって場合はすぐ薬をやめれます。1週間に1回、長くても4週間に1回ってことは、薬の効果もそれくらいでなくなるってことだから、歯の治療も少し期間をおいてやればいい。(歯の治療内容によっては薬を継続したままの場合も。歯科医との相談必須)

 

けどプラリアは半年に1回です。つまり薬効が6か月続きます。なのでこれあかんってなってもすぐに体内から薬がなくなるわけではないです。
薬の販売元である第一三共が顎骨壊死に関してのフローチャートを作成しています

プラリア/ランマーク適正使用のお願い~顎骨壊死の発現を防止するために~/第一三共

 

ビスホスホネート製剤・プラリア共に使う前には必ず歯医者に診てもらってすべき治療を終わらせるようにしましょう。

また服用中に歯科医を受診するときは必ずビスホスホネートを飲んでる/プラリアを打った事を必ず伝えましょう。いつしたのかも記録に残しておくように。
特にプラリアは半年に1回なので忘れてしまう可能性もあります。

 

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長くなりましたがこんなところですかね。次からはうまく患者さんに説明できるようになりたいです。